『標準漢文法』018:2-1-1D副体詞

第一節 品詞(承前)

副体詞 Adjective

副体詞は、英文典に所謂る形容詞(Adjective)中の、限定形容詞(Limiting adjective)である。

□副体詞は、属性の概念を表し、他語の意義の実体(意義そのもの)に従属する語である。

「諸」有功者    「凡」君子人
「各」隊伍     「該」人物
「翌」三年     「明」十日
「昨」元年     「故」厳君

の「 」のたぐいだ。みな下の名詞を基本として之に従属し、その名詞の表す概念の実体を限定している。

凡そ副体詞は、大抵名詞の上へ用いられる。(■第四節参考)

漢文で副体詞たるものも、日本の訓読に於いては必ずしも副体詞であるとは限らない。例えば「諸学校」の如きは、「モロモロの学校」と読めば「諸の」は副体詞であるが、「ショガッコウ」と一気に読めば、日本語としては「諸学校」全体が一名詞である。

「翌三年」「故厳君」などの類は、「翌」「故」の所で区切って読むから、訓読に於いても副体詞である。「凡」は「凡そ」と読むから、訓読では副詞である。漢文そのものとしての品詞別と、訓読した上の日本語としての品詞別とは、厳密に区別されなければならない。

副体詞は、その数が甚だ少ない。英語などに於いても、真の副体詞は冠詞・指示形容詞・数詞の三種であって、沢山はない。英文典で言う性質形容詞(Qualifying adjective)と称するものは、主語を取らないから叙述性がないと誤解されて、アヂェクティーブの内へ入れられているが、実は動詞の一種であって、判定性がある。

副体詞という名称は、私の造語である。体にう詞という意味だ。体を体言の義として、名詞に副うのだと言えば早わかりがするが、私は体を実体の意義と解したい。

副体詞は、属性の概念を表すものである。属性の概念には、判定性はない。判定性があれば、作用の概念である。それ故動詞には叙述性があるが、副体詞には叙述性はない。副体詞と動詞との別は、下の名詞と顛倒してみれば分かる。

連体的用法        終止的用法
「聡明」ナル学生……………学生聡明
「忠良」ナル臣民……………臣民忠良
「巨大」ナル戦艦……………戦艦巨大
「窈窕」タル美人……………美人窈窕

は顛倒して意義が通ずる。それは「 」に叙述性があるから、顛倒した場合に叙述語となるのである。そういうのは動詞だ。

「諸」学校…………………学校「諸」
「凡」学校…………………学校「凡」
「該」人物…………………人物「該」
「翌」三年…………………三年「翌」

は顛倒が出来ない。下の「 」は意味を成さない。それは叙述性がないからである。こういうのは副体詞だ。

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