『標準漢文法』008:1-1-2E詞

第二節 言語の構成(承前)

詞は断句の材料たるべきものであって、自己単独の力によって観念(概念を含む)を表すものである。例えば「山」「河」「往」「来」「遠」「近」「其」「夫」「寧」「或」「焉」「哉」の類だ。

詞に単詞と連詞との別がある。

単詞とは単一の詞であってこれを分けると詞で無くなるものである。「山」は一単詞である。分けようが無い。「伯楽」「瑪瑙」や「諸葛」「欧陽」などは一単詞である。分ければ最初の意義と関係の無いものになる。

連詞は、詞と詞とが一方は他の一方に従属し、一方はこれを統率し、従属統率の関係を以て二者が統一されているもので、外部から見れば一詞として意義を成し、内部から見れば二詞を成しているものである。例えば

  • 「古之聖人」「今人之詩」
  • 「死而後止」「去不復来」
  • 「由此観之」「使人言」
  • 「甚遠」「頗近」
  • 「花落」「月出於東天」

の「…」のような類だ。此れ等は皆一つの事物を表し、一つの事件を表し、一つの状態を表すのであるから、その内部には区画はあっても外部から見れば一詞である。

連詞は詞と詞との結合であるが、連詞も矢張り詞であるから、連詞の中には単詞と単詞の結合もあり、単詞と連詞の結合もあり、連詞と連詞の結合もある。連詞と連詞の結合に至っては、「由此」「観之」のような短いものもあるが、先の「郷二世…天下集矣」のような長いのもある。これは一断句であるが同時に連詞である。

□詞というと世間では単詞をのみ指すようであるが、私は其れは文法上よくないと思う。単詞でも連詞でも、その相違は内部の構造だけで其れの自己に対する文法上の効力に至っては全く同様である。詞と言えば特に単詞と断らない限りは連詞をも含むものと解しなければならない。

□断句は詞(単詞あるいは連詞)より成るものであって、詞は断句の成分である。否、断句はみな詞である。同じものが断句であると同時に必ず詞である。

例えば「月出於東山之上」は一つの断句であって同時に一つの詞(連詞)である。これを断句というのは一つの断定を表す点から言い、これを詞と言うのは一つの概念を表す点から言うので、その見る方面が違うのである。出来た結果から言うから断句であるが、その材料から言えば詞である。

喩えば木で作った机を机だと言うことも木だと言うことも出来、刀を刀だということも鉄だということも出来る様なものである。但し断句はみな詞であっても、詞がみな断句であるとは言えない。

□詞が断句たるには二つの条件がある。それはその詞が絶対性と独立性とを持っていることである。

絶対性とは従属語を要さずに自己の力だけで具備した概念を表す性質を言う。例えば「出」「来」は物の作用を表す語であって、ある主体に対して相対的な概念を表すのであるから、相対の基準を表す語、例えば「月」「人」などの類を加えて「月出」「人来」などのように言わなければ意義が具備しない。〔対して〕「月出」「人来」は絶対性がある。

独立性とは他に従属しない性質である。「月出」「人来」は絶対性があるのみならず独立性もあるから断句になる。併し「月出則」と言うと絶対性はあるが独立性は失われる。それゆえ他語へ従属して「月出則我賞之」などのように言わなければならない。そうして「我賞之」は独立性があるから「月出則我賞之」は断句になる。

□単詞であっても絶対性と独立性があればそのまま断句になる。例えば「然」「否」「嗚呼」等は単詞であるが、そのまま断句になり得る。断句は必ずしも連詞ばかりとは限らない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

関連記事(一部広告含む)