『漢文研究要訣』016:1-4白文訓読と造語法(9)反語格の語法・その他

六 反語格の語法〔承前〕

1. 疑問代名詞を用いたもの〔承前〕

孰(いずレカ/たレカ)

  • 其孰能知之。(『中庸』)
    〔其れ孰れか能く之を知らん。〕
  • 赤也爲之小、孰能爲之大。(『論語』先進
    〔赤也之を小爲らば、孰れか能く之を大爲らん。〕
  • 人亦孰不欲富貴。(『孟子』公孫丑下)
    〔人亦た孰れか富貴を欲せ不らん。〕
  • 管氏而知禮、孰不知禮。(『論語』八佾)
    〔管氏にし而禮を知らば、孰れか禮を知ら不らん。〕
  • 孰不簞食壺漿、以迎將軍乎。(十八史略)
    〔孰れか簞食壷漿もて、以て将軍を迎え不らん乎。〕

  • 誰能出不由戶。(『論語』雍也
    〔誰か能く戸に由ら不るして出でん。〕
  • 夫誰與王敵。(『孟子』梁恵王上
    〔夫れ誰か王与敵わん。〕
  • 能知其國家、誰敢侮之。(『孟子』公孫丑)
    〔能く其の国家をおさめば、誰か敢えて之を侮らん。〕

疇(たれカ)

  • 萬姓仇予。予將疇依。(『書経』)
    〔万姓予れを仇とす、予れ将に畴にか依らん。〕
  • 帝曰、疇咨若時登庸。(『書経』)
    〔帝曰く、畴か時にしたがわんものをいてもちいん、と。〕

疇は普通には多くない。古文に限ると言ってもよろしい。

敢不を用いたもの

  • 臣敢不竭股肱之力、 效忠貞之節、継之以死。(『十八史略』三国)
    〔臣敢えて股肱之力を竭し、忠貞之節をいたし、之に継ぐに死を以てせ不らんや、と。〕
  • 愈敢不吐露情實。(韓愈「答陳商書」)
    〔愈敢えて情実を吐露せ不らんや。〕

上の如きは「敢えて…せざらんや」と反語に訓ずるのであるが、古文では「敢えて…せず」と否定に訓ずることもある。前後の文勢によりて注意せねばならない。

副詞と終詞を用いたもの

亦…乎

  • 學而時習之、不亦說乎。有朋自遠方來、不亦樂乎。(『論語』学而
    〔学び而時に之れ習う、亦いに説から不乎。朋の遠方自り来たる有り、亦いに楽しから不乎。〕

其…乎

  • 孔子曰、才難。不其然乎。(『論語』泰伯
    〔孔子曰く、才難し。其れ然ら不乎と。〕
  • 食少亊煩、其能久乎。(『十八史略』三国)
    〔食少なく事煩わし、其れ能く久しからん乎、と。〕

其…諸

  • 舉爾所知。爾所不知、人其舍諸。(『論語』子路
    〔爾の知る所を挙げよ。爾の知ら不る所、人其れ諸を舎かんや。〕

終詞のみを用いたもの

旦旦而伐之、可以爲美乎。(『孟子』告子上)
〔旦旦にして之を伐る、以て美しと為す可けんや。〕

自反而不縮、雖褐寬博、吾不惴焉。(『孟子』公孫丑上)
〔自ら反りて縮からずんば、褐寬博しと雖も、吾おどさざんや。〕

聖人之憂民如此。而暇耕乎。(『孟子』滕文公上)
〔聖人之民を憂うるや此の如し。し而耕すに暇あらん乎。〕

孰使予樂居夷而忘故土者。非茲潭也歟。(柳宗元「鈷鉧潭記」)
〔孰か予を使て夷に居るを楽しみ而故土を忘れしむる者ぞ。茲の潭に非ず也歟。〕

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