二 重畳法
あるいは層塁法ともいい、またあるいは塁語、類句などともいう。第一の対偶法に次いで多く用いられるのが、即ちこの法であろう。その対偶法と異なる所は、語句が三句以上層塁していて、しかも毎句必ず一様の文字が用いられることだ。例えば
- 周公曰冬日之閉凍也不固則春夏之長草木也不茂天地不能常侈常費而況於人乎故萬物必有盛衰萬事必有弛張國家必有文武官治必有賞罰是以智士儉用其財則家富聖人愛寶其神則精盛人君重戰其卒則民眾民眾則國廣是以舉之曰儉故能廣(『韓非子』解老)
これを分解してみると、下のような塁語がある。これだけ分かると、その残りは極めて簡単になる。
- 萬物必有盛衰┳必有の二字で句を成している。
萬事必有弛張┫
國家必有文武┫
官治必有賞罰┛ - 智士儉用其財則家富┳「…すれば則ち…である」の形式である。
聖人愛寶其神則精盛┫
人君重戰其卒則民眾┛
周公曰く、冬日之閉じ凍る也固から不らば、則ち春夏之草木を長うる也茂から不。天地常に侈りて常に費やす能わ不、し而況んや人に於いてを乎。故に萬物必ず盛衰有り、萬事必ず弛張有り、國家必ず文武有り、官治必賞罰有有り。是れを以て智士其の財を儉しみ用いらば、則ち家富み、聖人其の神を愛し寶ばば、則ち精盛んなり、人君其の卒を重んじ戰わば、則ち民眾し。民眾からば則ち國廣く、是れ以て之を舉げて曰く、儉ましき故に能く廣むと。
次の例も、分解すると対句と類句とに帰してしまう。
- 曾子有疾孟敬子問之曾子言曰鳥之將死其鳴也哀人之將死其言也善君子所貴乎道者三動容貌斯遠暴慢矣正顏色斯近信矣出辭氣斯遠鄙倍矣籩豆之事則有司存(『論語』泰伯)
- 曾子有疾、孟敬子問之。曾子言曰┳鳥之將死、其鳴也哀
┗人之將死、其言也善。 - 君子所貴乎道者三┳動容貌、斯遠暴慢矣。┳籩豆之事、則有司存。
┣正顏色、斯近信矣。 ┫
┗出辭氣、斯遠鄙倍矣。┛
曾子疾有り、孟敬子之を問う。曾子言いて曰く、鳥之將に死せんとするや、其の鳴く也哀し。人之將に死せんとするや、其の言也善し。君子の道乎貴ぶ所の者は三。容貌を動かして斯に暴慢に遠ざかる矣。顏色を正して斯に信に近づく矣。辭氣を出だして斯に鄙倍に遠ざかる矣。籩豆之事は、則ち有司存りと。
その他類例には乏しくない。下の例は最も正しい重畳法である。
- 聰明睿知足以有臨也寬裕溫柔足以有容也發強剛毅足以有執也齊莊中正足以有敬也文理密察足以有別也(『中庸』)
- 聰明睿知、足以有臨也┳長短相同じく、足以有の三字みな相通じて塁層している。
寬裕溫柔、足以有容也┫
發強剛毅、足以有執也┫
齊莊中正、足以有敬也┫
文理密察、足以有別也┛
(唯だ天下の至聖のみ、能く…とす。)聰明睿知にして以て臨む有るに足る也、寬裕溫柔にして以て容るに足る也、發強剛毅にして以て執る有るに足る也、齊莊中正にして以て敬う有るに足る也、文理密察にして以て別つ有るに足する也。
次の例も同様。
- 為肥甘不足於口與輕煖不足於體與抑為采色不足視於目與聲音不足聽於耳與便嬖不足使令於前與(『孟子』梁恵王上)
- 為肥甘不足於口與 ┳○の所には為の字を省略したもの。
○輕煖不足於體與(抑)┫抑を挟んだのは語勢を添えたもの。
為采色不足視於目與 ┫
○聲音不足聽於耳與 ┫
便嬖不足使令於前與 ┛
肥甘きもの口於足ら不るが為め與。輕く煖きもの體於足ら不る與。抑いは采色り目於視るに足ら不るが為め與。聲音耳於聽くに足ら不る與。便嬖前於使令いするに足ら不る與。
以上は形式の正整なものだが、長短錯綜して変化の妙を極めたものもある。次の例は皆已の二字が相通じて重畳しているものである。
- 天下之賢才皆已舉用奸邪讒佞欺負之徒皆已除去四海皆已無虞九夷八蠻之在荒服之外者皆已賓貢天災時變昆蟲草木之妖皆已銷息天下之所謂禮樂刑政教化之具皆已修理風俗皆已敦厚動植之物風雨霜露之所沾被者皆已得宜休徵嘉瑞麟鳳龜龍之屬皆已備至(韓愈「後念九月復上宰相書」)
- 天下之賢才皆已舉用
奸邪讒佞欺負之徒皆已除去
四海皆已無虞
九夷八蠻之在荒服之外者皆已賓貢
天災時變、昆蟲草木之妖皆已銷息
天下之所謂禮、樂、刑、政教化之具皆已修理
風俗皆已敦厚、動植之物、風雨霜露之所沾被者皆已得宜
休徵嘉瑞、麟鳳龜龍之屬皆已備至
天下之賢才皆な已に舉げ用いられ、奸邪讒佞欺負之徒皆な已に除き去られ、四海皆な已に虞れく、九夷八蠻之荒服之外に在る者皆な已に賓りて貢ぎ、天災時變昆蟲草木之妖皆な已に銷け息み、天下之所謂る禮樂刑政教化之具皆な已に修め理い、風俗皆な已に敦くして厚く、動植之物風雨霜露之沾う所に被る者皆な已に宜しきを得、休徵嘉瑞麟鳳龜龍之屬皆な已に備わり至る。
荒服:都を中心に年輪状に区切った中国地域内の、最も外側。中華の辺境。
休徵:=休兆。めでたいしるし。