『標準漢文法』025:2-1-2B品詞の虚実と代名詞

第二節 名詞の小分〔承前〕

〔品詞の虚実と代名詞〕

詞の二大別と真字虚字

名詞を本名詞・代名詞・不定名詞・形式名詞と四種に分けることは、上述の通りであるが、この本・代・不定・形式の四別は、名詞だけでなく動詞でも副体詞でも副詞でも感動詞でも、みな同様である。

されば詞を大別して、一方で名詞・動詞・副体詞・副詞・感動詞・複性詞の六品詞とする他方では、詞を大別して本詞・代詞・不定詞・形式詞・複性詞の五種とすることが出来る。この両分類は縦横の関係をなすもので、一方を大別とすれば他の一方が小別になるので、どちらを大別としても善いのである。

例えば名詞に本名詞・代名詞・不定名詞・形式名詞の四種があるということも出来、本詞に本名詞・本動詞・本副体詞・本副詞・本感動詞があると言うことも出来るのである。


松下大三郎『標準漢文法』011と内容重出。

  名詞 動詞 副詞 副体詞 感動詞
本詞 本名詞 本動詞 本副詞 本副体詞 本感動詞
代詞 代名詞 代動詞 代副詞 代副体詞 代感動詞
不定詞 不定名詞 不定動詞 不定副詞 不定副体詞 不定感動詞
形式詞 形式名詞 形式動詞 形式副詞 形式副体詞 形式感動詞

本詞・代詞・不定詞の三つは実質詞である。されば詞を大別すれば、実質詞と形式詞とになる。西洋の言語学者は、詞を観念詞と関係詞の二つに分けるが、これは不合理である。何となれば、この二種に入れられないものがある〔からだ〕。

形式詞中の関係詞でないもの、例えば形式名詞の「者」「等」、形式動詞の「可」「被」「Shall」「Will」などの類は、観念詞へも関係詞へも入らない。

然るに東洋では、漢学者は詞を実字・虚字の二つ*に分けた。これは実に合理的である。実字は即ち実質詞で、虚字は即ち形式詞である。勿論人によって、実字虚字の区別に多少の異同はあるが、虚実と分けた精神から言って、実字虚字の解は、実質詞・形式詞としての区別でなければならない。


実字:中国語の文法で、実質的な意味をもっていることば。名詞・代名詞・動詞・形容詞など。

虚字:実在的な内容を持たない副詞・前置詞・後置詞・助動詞・接続詞・感嘆詞・否定詞など。

中国文法で、実字・虚字・助字とわける場合、山・川・草・木など実体のある名詞をあらわすことばを実字というのに対して、飛・行・走・流など動きやようすをあらわす動詞および形容詞を虚字という。助字は中国語の付属語。また、それを示すのに用いられる漢字。たとえば焉・矣・哉・也・乎など。前置詞の於(オ)や于(ウ)などを含めることもある。漢文訓読では置字といって読まないことが多い。

代名詞独立の不可

従来の文法書は、名詞・代名詞を対等の二詞としているが、それは種々の点に於いてよくないと思う。今その理由を次へ述べる。

  1. 形式名詞を、所謂る名詞の中へ入れるとすれば、所謂る名詞とは、本動詞と形式名詞の二つを言うのであって、それには一貫した定義が立たない。事物を名づくるものが名詞だと言うが、形式名詞は事物を名づくるものではない。
  2. 形式名詞を、名詞の中へも代名詞の中へも入れずに、しかも形式名詞という一品詞を立てないとすれば、「者」の如きものが、品詞から漏れてしまう。
  3. 連詞の中には、「国家及我」というようなものがある。名詞・代名詞を別々の品詞とするとすれば、こういう連詞は、連詞的名詞か連詞的代名詞かという面倒な問題が生ずる。
  4. 動詞にも本動詞・代動詞等の別がある。代名詞を一品詞として、代動詞を一品詞としないことは不合理である。

所謂る名詞と代名詞とは、多少の相違はあっても、その事物を表す点は同一であって、連詞又は断句中に於ける文法的効力に至っては、全く同じである。品詞としては同品中に置かなければならない。これを別々の品詞とすることは、全く謂われのないことであると同時に、形式名詞の処置に困ることになる。

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