『標準漢文法』014:1-2-1E詞の相関論

第二節 言語の構成(承前)

詞の相関論

□詞の中には、その本性副性の如何によって、一詞そのままにて一段句を成すものがある。例えば、「然」「否」の類はそうだ。これらも「然らば」「否ざれば」などの意である場合には従属性を帯びるから、そのまま一断句にならず他語へ従属する。

〔対して〕詞が一詞でそのまま断句になる場合は、他詞との相対的関係は生じないが、苟も他詞と共に連詞を成す以上は、その詞の単独の性質以外に詞々の間に相対的関係を生ずる。

この詞々相対の関係に於ける法則を論ずるのが、詞の相関論である。詞の相関論は、詞の単独の性質をば論ぜずに、ただ詞と詞とを以て連詞を作る方法を論ずるもので、即ち連詞構成論である。

□連詞中に於ける詞と詞との関係は、ただ一つ従属と統率の関係である。従属と統率とは、二者の間に生ずる一つの作用を両面から観た区別であって、本来同一物である。従属を表とすればその裏は統率、統率を表とすればその裏は従属で、別々の物ではない。之を一語で謂って統合関係という。しかしその統合され方には色々ある。

  1. 名月○○…………主語○○叙述語●●●
  2. 名月○○…………帰着語●●●客語○○
  3. 名月○○(光)…実質語○○○形式語●●●
  4. 今宵○○賞月●●………修用語○○○被修用語●●●●
  5. 良夜●●…………連体語○○○被連体語●●●●

の○○は従属語で●●に従属し、●●は統率語で○○を統率してその連詞を代表しているが、1.では○○を主語と名付け、●●を叙述語と名付ける。2.3.4.5.みな上の例に註する様に、その統合関係が違う。

凡そ連詞は、上のような種々の統合関係によって成立するが、連詞〔は〕必ずしも断句を成すのではない。それが断句を成すには、それぞれの条件がある。即ちその詞が絶対性と独立性を帯びることを要する。

絶対性とは、自己の意義が完備して既に他語の従属を要しないことで、独立性とは、意義が終結して他語へ従属しないことである。単詞でもこの条件が具備していれば、そのままで断句になるし、その条件がまだ具備しなければ、具備するまで他語と相統合する*のである。


具備するまで他語と相統合する:つまり具備した箇所が白文の句点候補になる。


相関論の任務は、絶対性と独立性を有しない詞をして、他詞との統合によって絶対化せしめる過程を論ずるに在る。

そのところで〔は、〕詞の連詞中に於ける相対関係の種別を論ずること、如何なる詞は如何なる統合を要するかということ、統合された場合に於ける詞と詞との先後的位置と、この三者を論ずる必要がある。

前者は成分論で、中者は統合論で、後者は排列論である。詞の相関論はこの三者に尽きる。Syntaxとは、こういう解釈に於けるSyntaxでなければならなかった筈である。

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